久留米名中華探検記

予算13,000円 | 福岡県久留米の中華の名店探訪

六軒目 日吉町「源」の春餅

こんなところに中華があったんだと思った。

お店に入ると三本松公園がみえる席に案内された。

木が生い茂っていって、涼しげな景色をみることができる。

 

 

源さん晩酌セット ¥1,300

(前菜三種、水餃子か焼き餃子一皿、アルコール一杯)の貼り紙が輝いていたので、それを頼んだ。

 

隣の席ではマダム2人が純粋に中華を楽しんでいるといった雰囲気で

奥の座敷で青年たちの宴会が始まっていた。

なんとなく遠くに来たみたいな気分だった。

 

晩酌セットの前菜はとても豪華だった。

きらきらしていた。

 

源さんのメニューは町中華というよりホテルに入っているような中華料理(中国料理?)っぽい。

 

春餅¥1,100円も追加注文した。

 

春餅はずっと前に大連で食べたことがあった。

クレープみたいな薄い生地におかずを包んで食べる。

そのときにはおかずにじゃがいものきんぴらもあって、それもまたおいしかった。

なんだか漠然と日本では食べられないだろうなあと思いながらむしゃむしゃ頬張っていた。

 

そのとき以来の再会だった。

 

珍しい!とはしゃいで注文したのだが、

目の前のきらきらした前菜をつまみにビールを飲んでいると

 

日本でも高級な中華のお店には普通にメニューに並んでいるんじゃないか?

 

と思えてきた。

隣の優雅なマダムたちの存在がその仮説に説得力をもって迫ってくるような気がした。

 

わたしがそういうお店を選んでいないだけだ。

思えば、大連で友人に連れていったお店は食堂というよりよそ行きの店だった。

中国でも日本でいったら懐石料理的な立ち位置の店にあるものなのかもしれない。

本当のところはどうかわからないけれど、

世界はまだまだ知らないことばっかだなと思った。

 

日の沈んでいく公園を眺めながら春餅を巻いた。

 

いつの間にか隣のマダムたちは帰っていた。

一方で奥の青年たちの宴会はどんどん下品な話題で盛り上がってきていた。

 

 

普段踏み入らない世界にきたのだと思った。

 

 

 

源さん晩酌セット ¥1,300

前菜三種、餃子、生ビール

春餅 ¥1,100

生ビール ¥550

 

 

¥2,960 - ¥2,950 = ¥10

五軒目 寺町「知味斉」の豚まん

 

知味斉は寺町のはしっこにある。

散歩の途中に寄るのがちょうどよく

大体は豚まんをひとつふたつ買って

すぐにぱくぱく食べてしまう。

 

けれど、今回は久留米中華探検を名目に

残金¥4,450円を持って、知味斉を目指していった。

散歩のついでではない。

 

せっかくなので、ちまきも買った。

豚まんはすぐに食べたいのを我慢して家に持って帰った。

 

せっかくなので、温め直して食べようと思った。

いつも商品と一緒に温める目安の紙を渡してくれる。

その紙に書いてあるとおりにしてみようと思った。

 

せっかくなので、電子レンジではなくオーブントースターを使った。

せっかくなので、アルミホイルのままではなくお皿の上にのせた。

 

食べてみるとびっくらこいた。

いつもおやつ感覚でぱくぱく食べてしまう豚まんとは別物で、立派な点心になっていたのだ。

 

知味斉は「せっかくなので」という気持ちに素晴らしいお返しをくれる。

 

 

 

¥4,450 - ¥1,490 = ¥2,960

四軒目 東町「丁丁」の晩酌セット

 

丁丁はアーケードの一番街と二番街の間にある。

店の前にぶら下がっている大きな赤い提灯はただの飾りじゃなくて夜になるとちゃんと光る。

 

提灯が光っているのはいい。

つい惹かれてしまうところを考えると

わたしも光に集まる虫たちと同じだなあと思う。

 

店に入って窓際の席に座った。

窓には大連の写真と青島ビールの空瓶が並べられている。

ホール担当のおじさんはテキパキ動きながらたっぷりお茶の入ったティーポットを運んでくれる。

忙しいときは声をかけづらくなるので、そこですかさず晩酌セットを注文した。

 

「もう決まったのお!はやいネ〜」と誉めてくれた。

 

そうして、すぐに瓶ビールを与えられたわたしは窓際という身分相応な席でご機嫌だった。

ザーサイもすぐに持ってくてくれた。

 

 

おじさんの声はよく通る。さらに陽気だ。

 

 

おじさんはわたしとは反対側の席にいる二人組にすごくしゃべりかけていた。

そうして、ひと通り世間話をし終わると「中国いったことある?ぜひいってね、報道とは全然違うから」みたいなことを明るくいっていた。

 

 

本当にそうだ。

想像を超えてくるのが中国だった。

実はわたしが初めて行った海外が大連だった。

中国の友人が案内してくれたのだけれど、

星海広場で空中ブランコに乗ったり、ロシア人街で怪しい土産物屋や野外映画の会などに出くわしたり、ケンタッキーでお粥を食べたり。

特に、大きな通りを車の隙をついて走り抜けて横断するのは痛快だった。

通りはクラクションが鳴り響いていて、たくさんの車が猛スピードで無秩序に走っているようにみえた。

とにかく自分の身の安全のために信号機なんてあてにしなくてもい。

わたしはそこで深呼吸できた気がする。

少なくとも10年前の大連は全体的に寛容というか気楽な空気に満ちていた。

 

 

だから、おじさんがいいたいことはよくわかる。

 

そう思いながら、わたしは水餃子をどう食べたら1番美味しいか研究していた。

 

晩酌セットの餃子は焼き餃子か水餃子か選べる。

その日は一皿に8個あるようにみえた。

水餃子はぷりぷりでそのままかぶりついたら確実に爆発する。

やけどはしたくないし、中のスープをみすみす床や壁に飛び散らせるのはけしからない。

すべて飲み込まなければ。

6個目くらいで落ち着いたのは

れんげの上ではじっこに少しだけ穴を開けて中のスープをこぼすことなくすするという食べ方だった。

なにもつけなくてもおいしかったのでぱくぱく食べてしまったのだけれど、最後の一個でお醤油を少したらしてみたら、これがとてもおいしかった。

 

 

わたしが水餃子の食べ方を確立した頃、二人組は帰っていった。

おじさんは両手で下げものを抱えながらわたしのほうに一瞬顔を向けると

 

「よくしゃべるでしょ?」

 

とだけいって厨房に消えていった。

 

 

 

ー 晩酌セット ¥1,600  -

● 瓶ビール中瓶(サッポロ赤星)

● 餃子一皿

● ミニ炒飯

● ザーサイ

 

 

残り

¥6,050 - ¥1,600 = ¥4,450

 

 

 

三軒目 六ツ門「悟空」のすっぱいやつ

 

悟空は六ツ門の雑居ビルの1階にある。

 

悟空の「すっぱいやつがおいしいですよ」という話だった。

 

すっぱいものはすきだ。

 

「それなんて名前ですか」と聞く。

「とにかく、すっぱいやつっていったら通じますよ」という。

ふむ。

 

 

20時半ごろ、

なぜかその日はふらっとカウンターに座った。

わたしたち以外他に誰もいなかった。

目の前のテレビではバナナマンサンドウィッチマンの番組が流れている。

ぼんやりした内容なのに、やけに注意を引く。

呼びかけられて振り向くと、すごく溜めてからやっぱなんでもないといわれてるみたいな番組だった。

それでもついみてしまうのは話し方の抑揚なのか、単に音量なのか。

さすがお笑い芸人だ。

 

おかげで隣の人との会話はまったく弾まなかった。

なんとなく所在なく、

カウンターのなかを見渡した。

 

悟空の厨房はよくみるとなんだかちぐはぐだった。

居抜き物件を中華料理仕様に変えたんだろうか。

元流しだったらしき場所に今はコンロがあって、

その上の柱にすごく黄ばんだエアコンがついている。

 

なかではスキンヘッドのおじさんがひとりで料理している。

おじさんがしゃべっているのをあまりみたことがない。

接客のお姉さまが注文を伝えるとひとことふたこと中国語で言葉を交して後はカンカン鍋を振るっている。

 

悟空は必要以上のことはしない。

余計な笑顔も言葉もない。

お客さんがいないとカウンターかテーブルに座っているし、

おしぼりを渡すときもテーブルにぽいっと置くし、

グラスもいつも水滴がついている。

 

けれど、厨房がみえる物件を選んで営業しているというだけでよっぽど信用できる。

あのおじさんがべらべらしゃべらないのもいい。

 

 

 

そして、「すっぱいやつ」の正体はこれだった。

「中国北方料理 冬の名物家庭料理」と書いてある。

この酸菜というのは発酵させた白菜(たぶん)だったのだけれど、

韓国のキムチとも違って、爽やかな発酵の香りがした。

とてもいい香りだった。

 

しばらくすると

おじさんがカウンターの向こうから次の料理を渡してくれた。

そのとき、はじめてまじまじと顔をみたような気がする。

思っていたより、優しそうなきらきらした目だった。

恥ずかしがり屋なのかなあと勝手に想像した。

 

 

- お会計 ¥2,550 -

●瓶ビール中瓶(キリンラガー)  ¥550

●コーラ  ¥250

●すっぱいやつ  ¥1,100

●もやし炒め  ¥650

 

残金

¥8,600 - ¥2,550 = ¥6,050

 

 

二軒目 六ツ門「真真好」のさんざし酒

 

真真好はシティプラザの1階にある。

しんしんこうと読むらしい。

ピンイン的カタカナで発音したらチェンチェンハオなので、

店の横を通るたびに心のなかでそう呼んでいた。

しんしんこうと読むことは結構後で知った。

 

日本の漢字には読み方が何パターンもある。

音読みとか訓読みとかピンイン的カタカナとか。

 

読み方がたくさんあるのはしょうがないと思う。

ただ、

台湾のガイドブックとかで台北はたいほくじゃなくてタイペイと読むのに九份はきゅうふんとなっているのをみつけると、なんでだよと思う。

そっちはピンイン的カタカナで表記しないのか。

 

とにかく

そういうとこ、日本の表記って適当っていうか。

適当なのも難しいよね。発音するのが。

 

洗濯機って書くけど、せんたっきっていったりさ。

大分の百貨店ときはって書いてときわって読むんだよ。

でも、地名のうきははうきは。

うきわって読みたい気持ちになってる人、いるかなって

ときどき思ってる。

 

中華料理屋の店名は漢字にピンイン的カタカナを当ててるところはなんか本格的っぽい気もするし、ちょっと胡散臭いなって雰囲気の場合もある。

「うちの麻婆豆腐はひと味違いますよ?」みたいな。

逆にちょっとこじんまりとしたお店で中国の方が日本の発音で表記してるところはなんかすごく友好的だと思っている。

そういうお店は日本人が好きな王道中華だけじゃなくて、ディープなメニューがありそうな気がする。

個人の勝手な想像だけど。

音に左右されるというか判断しているところはある。

 

そんで、真真好は

メニューはチェンチェンハオって感じで

お皿の感じとか店内とかはしんしんこうって感じがする。

ホテルの中華みたいな雰囲気もあるけど、敷居が高い感じゃなくて食堂ですって感じもする。

バランスが不思議だなあと思う。

メニューをみているといろいろ挑戦してみたくなったのでビールじゃなくてさんざし酒というのを頼んでみた。

さんざしは姫りんごくらいの赤い酸っぱい実で中国では一般的なんだとおねえさんが教えてくださった。

きれいな赤色をしていて、味はアセロラドリンクみたいだった。

 

ひとつ勉強になった。

他のお店でもメニューにみつけたら飲んでみようと思った。

 

 

 

- お会計 ¥2,900 -

●さんざし酒

ノンアルコールビール

●辣酱肉絲

●ラム串2本

●花巻

 

残り

¥11,500 - ¥2,900 = ¥8,600

 

一軒目 東町「餃子専門店 明楽」の特等席

 

 

西鉄久留米駅前にいた。

待ち合わせまで時間があるので、

明楽で晩酌セットを楽しもうとひらめく。

 

明楽は駅から遠くないのに

たくさん横断歩道を渡らなければならない場所にある。

 

18時40分頃に店に入ると

奥のテーブルはのスーツのおじさん軍団が陣取っていて

手前のテーブル席は10人以上の団体の予約席だった。

 

断られるかと思ったら、

「あと15分で宴会がスタートするから早めに注文してくれたら大丈夫」といわれた。

 

わたしは大宴会が始まるテーブルのすぐ横のすごいちっちゃい席に座らせてもらえた。

急いで晩酌セットを注文。

 

しばらくすると

サラリーマンたちが入場してきた。

初めの方にきたサラリーマンたちは

下座を奪いあっていた。

それから少し偉い人が来て、席の指示があってその通りになった。

1番端の席に1番気の利く人が座っていた。

 

わたしはなるべく興味を持たれないように

小さくなって餃子を食べた。

餃子はおいしかった。

久留米の餃子のなかでいちばん好きだ。

中味も選べる。

皮ももちもち。

にんにくが入ってないのもいい。

 

餃子が食べ終わる頃、

「団体に囲まれて悪いから」といって麻婆豆腐の小皿をサービスで出してくれた。

「もともと悪いのはそこに図々しく入ってきたわたしのほうですよ」と思ったけど、

うれしかったのですぐ受け取った。

 

2杯目の瓶ビールが飲み終わる頃、

待ち合わせの人がやってきた。

 

 

- 晩酌セット¥1,500 -

●エビ餃子(焼き)

●セロリ餃子(水)

●生ビール(アサヒ)

●瓶ビール中瓶(キリンラガー)

 

残り

¥13,000 - ¥1,500 = ¥11,500